2026年9月10日、警察庁は前サイバー捜査課長の伊貝耕氏(55)を懲戒免職にしたと発表した。
伊貝氏は欧州刑事警察機構への派遣中などに、捜査協力者への謝礼や接触費を装い、約4年間で50回、総額約173万円の捜査費を不正に受け取ったとされる。
業務用パソコンの画像編集機能を使って領収書の日付や金額を書き換え、私的な会食を捜査協力者との接触に見せかけていたことも判明。
流用した金は生活費のほか、知人女性との交際費や遊興費に使ったと説明している。
警視庁は同日、伊貝氏を詐欺、背任、偽造有印私文書行使の疑いで東京地検へ書類送検した。
逮捕されたわけではなく、起訴の有無は今後、検察が判断する。
この記事では、伊貝耕氏の経歴とプロフィール、不正の詳しい手口、知人女性との関係、発覚まで見過ごされた理由、今後の刑事手続きを整理する。
伊貝耕氏が懲戒免職・書類送検
警察庁の調査によると、伊貝氏は2022年7月から2026年4月までの間、捜査費を計50回にわたって不正に受給したとされる。
不正額は報道機関によって「約170万円」「約173万円」「約174万円」と表記に幅があるが、警察庁が認定した総額は約173万円と報じられている。
伊貝氏は事実関係を認め、2026年9月3日までに延滞金を含む約184万円を全額返還した。
返還後も警察庁は、幹部職員が長期間にわたり公金を私的に流用し、証拠となる領収書まで加工していた点を重くみて、最も重い懲戒処分となる免職を選択した。
中央省庁の課長経験者が懲戒免職となるのは異例で、全国のサイバー捜査を取りまとめていた人物による不正として大きな問題となった。
伊貝耕について


プロフィール
伊貝耕(いかい こう)
- 生年月日: 非公表
- 年齢: 55歳
- 出身地: 非公表
- 職業: 元警察庁職員、警察官僚
- 採用区分: キャリア技官
- 階級: 警視長
- 最終所属: 警察庁長官官房付
- 前職: 警察庁サイバー警察局サイバー捜査課長
- 入庁年: 1995年
- 処分: 2026年9月10日付で懲戒免職
- 書類送検された容疑: 詐欺、背任、偽造有印私文書行使
伊貝氏の出身地、学歴、家族構成などは公表されていない。
55歳という年齢から1970年または1971年生まれとなるが、誕生日は確認されていない。
サイバー捜査のエースとされた経歴
伊貝氏は1995年、情報通信分野を担当するキャリア技官として警察庁に入庁した。
警察庁本庁のほか、群馬県警や鳥取県警などで勤務し、情報通信技術や先端技術、サイバー犯罪対策の分野で経験を積んだ。
2022年6月には、オランダ・ハーグに本部を置く欧州刑事警察機構「ユーロポール」へ派遣された。
サイバー捜査部門のリエゾンとして、日本の警察と欧州各国の捜査機関をつなぐ役割を担っていた。
帰国後の2025年9月、警察庁サイバー警察局のサイバー捜査課長に就任。
国境を越えて行われるサイバー攻撃やランサムウェア、オンライン詐欺などに対応し、全国の警察によるサイバー捜査を取りまとめる立場となった。
長年にわたり情報通信とサイバー分野を歩んだことから、組織内ではエース級の幹部とみられていた。
しかし2026年6月に課長を離れて長官官房付となり、同年9月に懲戒免職となった。
捜査費173万円を流用した3つの手口

警察庁が確認した不正は、大きく3種類に分かれる。
1.領収書を加工した架空請求13回・約90万円
伊貝氏は、海外の治安機関関係者や捜査協力者へ渡す日本酒などを購入したように装い、領収書の日付、金額、数量などを改変していたとされる。
加工には業務用パソコンのペイント機能を使用。
すでに提出した領収書を別の支出にも使い回し、実際には存在しない支出を作って捜査費を請求していた。
この13回、約90万円分が刑事事件として書類送検された中心部分となる。
2.部下との会食を協力者との接触費に偽装33回・約62万円
実際には部下や職員との会食だったにもかかわらず、捜査協力者との接触や情報収集に必要な会食だったとする虚偽の書類を作成し、計約62万円を捜査費から支出させたとされる。
捜査費は秘匿性が高く、支出相手や目的を外部へ詳しく明かせない場合がある。
その性質が、不正な説明を見抜きにくくする一因になった。
3.補助金を受けた交流会費用を二重計上4回・約21万円
海外機関が主催する交流会では、相手機関から費用の補助を受けていた。
それにもかかわらず、食料品などの購入費全額を日本側の捜査費として請求し、計約21万円を二重に受け取ったとされる。
3種類を合わせると50回、総額約173万円に上る。
領収書偽造は飛行機内などで行われた
領収書の加工は、航空機での移動中などに行われていたと報じられている。
伊貝氏は調査に対し、試しに加工すると想像以上にきれいに仕上がり、精算も通ったため続けてしまったとの趣旨を説明したという。
最初の不正請求が見抜かれなかったことで手口を繰り返し、約4年間で50回まで拡大した形となる。
サイバー捜査と情報通信に精通した幹部が、特殊なソフトではなく、一般的な画像編集機能で領収書を加工していた点も注目された。
流用した金は不倫相手との交際費に使った?
警察庁の調査では、伊貝氏が2020年ごろから知人女性と不適切な交際関係を続けていたことも判明したとされる。
伊貝氏は不正に得た金について、生活費に加え、この女性との交際費や遊興費に使ったと説明。
「自由に使える金が欲しかった」との趣旨を話している。
一部報道では女性を「不倫相手」と表現しているが、氏名、年齢、職業、伊貝氏との詳しい関係は公表されていない。
女性が捜査費の流用を知っていた、または不正に関与したことを示す情報も出ていない。
今回の処分は交際関係そのものではなく、公金である捜査費を虚偽の書類で受け取り、私的に使った行為が中心となる。
不正は後任職員の疑問から発覚
不正が発覚したのは2026年6月だった。
ユーロポールの後任リエゾンが、海外機関から補助金が出ていた交流会について、伊貝氏が日本側にも費用全額を請求していたことを不審に思い、確認したことが端緒とされる。
警察庁が過去の支出記録や領収書を調べた結果、領収書の加工、会食相手の虚偽記載、費用の二重計上が次々と判明した。
伊貝氏は同月にサイバー捜査課長を離れ、長官官房付となった。内部調査の結果を受け、9月10日に懲戒免職と書類送検が発表された。
なぜ約4年間も見抜けなかったのか
不正の大半は、ユーロポールへの長期派遣中に行われていた。
海外での捜査協力は相手方や目的を詳しく開示しにくく、国内から支出内容を確認することにも限界がある。
領収書の形式が国内と異なることや、派遣職員が現地で単独行動する機会が多いことも、点検を難しくした。
さらに、伊貝氏は帰国後にサイバー捜査課長へ昇任している。
警察庁は、海外出張時の捜査費について事前の執行計画や事後報告の確認が十分ではなかったとして、管理体制の不備も認めた。
不正を見抜けなかった当時のサイバー捜査課長2人は警察庁長官注意、理事官2人は業務指導を受けた。
事件発覚までの時系列
2020年ごろ
知人女性との不適切な交際を始めたとされる。
2022年6月
ユーロポールのサイバー捜査部門へリエゾンとして派遣される。
2022年7月
捜査費の不正請求を始めたとされる。
2025年9月
帰国後、警察庁サイバー捜査課長に就任する。
2026年4月
警察庁が確認した不正請求の終期。約4年間で50回、総額約173万円に達する。
2026年6月
後任職員が二重請求を疑い、内部調査が始まる。伊貝氏は課長を離れ、長官官房付となる。
2026年9月3日
延滞金を含む約184万円を全額返還する。
2026年9月10日
警察庁が伊貝氏を懲戒免職。警視庁が詐欺、背任、偽造有印私文書行使の疑いで東京地検に書類送検する。
なぜ逮捕されず書類送検なのか
伊貝氏は逮捕されておらず、在宅のまま捜査を受け、事件記録と証拠が東京地検へ送られた。
逮捕は刑罰ではなく、逃亡や証拠隠滅を防ぐために必要性がある場合に行われる身柄拘束となる。
犯罪の疑いがあっても、住所や身元が明らかで、事情聴取に応じ、関係資料が確保されている場合には、逮捕せず書類送検することがある。
警視庁は今回、逮捕しなかった個別の判断理由を詳しく公表していない。
伊貝氏が事実関係を認め、全額を返還し、警察庁が領収書や会計記録を確保している事情などがあるが、これらが判断にどのように影響したかは明らかではない。
書類送検されたことは、有罪や不起訴が決まったことを意味しない。
今後は起訴される?刑事処分の見通し
東京地検は送付された証拠を確認し、伊貝氏を起訴するか、不起訴とするかを判断する。
処分では、領収書を繰り返し加工した計画性、13回にわたる約90万円の被害、公金を扱う警察幹部という立場が検討材料となる。
一方、本人が認めていること、延滞金を含めて全額返還したことなども考慮される可能性がある。
懲戒免職は警察庁による行政上の処分で、刑事処分とは別の手続きとなる。懲戒免職になったから起訴が確定するわけではなく、返金したから刑事責任がなくなるわけでもない。
2026年9月10日時点では、東京地検の処分は発表されていない。
警察庁が示した再発防止策
警察庁は、海外出張に伴う捜査費の執行方法を見直す方針を示した。
今後は事前に執行計画書を提出させ、帰国後の報告や領収書の確認を厳格化する。
海外機関から補助や負担を受けた場合も確認し、二重請求を防ぐ仕組みを整えるとしている。
山本哲也首席監察官は、幹部職員による行為を「言語道断」とし、国民に謝罪した。
サイバー犯罪を取り締まり、電子データの解析や不正の立証を指揮してきた幹部自身が、領収書の画像を加工して公金を得ていた。
個人の不正だけでなく、約4年間見抜けなかった警察庁の会計監査と監督体制も問われる事件となった。
まとめ
警察庁の前サイバー捜査課長・伊貝耕氏は、2022年7月から2026年4月までに計50回、約173万円の捜査費を不正に受け取ったとして、2026年9月10日付で懲戒免職となった。
手口は、領収書を画像編集機能で加工した架空請求、部下との会食を捜査協力者との接触費に見せかける虚偽申請、海外機関から補助を受けた費用の二重計上だった。
伊貝氏は「自由に使える金が欲しかった」との趣旨を説明し、生活費や遊興費、知人女性との交際費に使ったと認めている。延滞金を含む約184万円は全額返還した。
警視庁は詐欺、背任、偽造有印私文書行使の疑いで書類送検したが、伊貝氏は逮捕されていない。
起訴・不起訴は今後、東京地検が判断する。
事件は後任職員が二重請求に疑問を持ったことで発覚した。
警察庁は海外出張時の捜査費に対する事前・事後の確認を厳格化し、管理体制を見直すとしている。

