2026年8月17日、広島県警は会社の採用面接を受けた男性を海外へ移送したとして、株式会社Firstの代表取締役・前原里帆容疑者(32)と、同社の元取締役・松本佑香容疑者(30)を国外移送目的誘拐などの疑いで逮捕した。
男性に伝えられていたのは「3日ほどの国内出張」「鞄を運ぶ仕事」「報酬は30万円」という内容だった。
しかし、男性は広島駅から関西国際空港へ移動させられ、国際線で台湾へ渡航。その後、タイへ移動し、さらに別の国へ送られる予定だったとみられている。
広島県警は、2人が匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」のリクルーター役を担い、男性を特殊詐欺のかけ子や違法薬物の運び屋として利用しようとした可能性があるとみて捜査している。
前原容疑者は容疑を否認する一方、松本容疑者は「特殊詐欺などの仕事をさせるために海外へ派遣した」との趣旨の供述をしているという。
前原里帆について


プロフィール
前原里帆(まえはら りほ)
- 生年月日:非公表
- 年齢:32歳(2026年8月の逮捕時点)
- 出身地:非公表
- 住所:広島市安佐南区
- 職業:会社役員
- 役職:株式会社First代表取締役
- 学歴:非公表
- 家族構成:非公表
前原里帆容疑者は、広島市に本社を置く株式会社Firstの代表取締役を務めていた人物だ。
株式会社Firstは、外構工事、エクステリア工事、土木工事、解体工事などを手がける建設関連会社で、広島県、山口県、福岡県を中心に事業を展開している。
前原容疑者の詳しい生年月日や出身地、学歴、過去の勤務先などは明らかになっていない。
前原里帆容疑者は何をした?
前原容疑者らは何者かと共謀し、広島県内に住む47歳の男性を海外へ移送した疑いが持たれている。
男性は事件の約1年前、前原容疑者が経営する株式会社Firstの採用面接を受けていた。
男性は面接で不採用になったが、2026年2月上旬ごろ、突然仕事を紹介する連絡を受けたという。
男性に伝えられた仕事の条件は次のようなものだった。
- 3日ほどの国内出張
- 鞄を搬入する仕事
- 報酬は30万円
- 詳しい仕事内容は現地で説明する
男性は国内で完結する短期間の仕事だと考えていた可能性がある。
しかし、実際には広島駅から関西国際空港へ向かい、国際線で台湾へ渡航。その後、タイへ移動することになった。
警察は、前原容疑者らが本当の目的や渡航先を知らせないまま、男性を国外へ移送したとみている。
国外移送目的誘拐とは?
「誘拐」と聞くと、暴力を使って相手を連れ去る行為が想像されやすい。
しかし、事実と異なる説明をして相手をだまし、本来の意思とは異なる場所へ連れて行く行為も、状況によっては誘拐に該当する可能性がある。
今回、男性には「国内出張」と説明していたにもかかわらず、実際には国際線へ搭乗させて台湾へ渡航させた疑いが持たれている。
広島県警は2人を、次の容疑で逮捕したと報じられている。
- 国外移送目的誘拐
- 被略取者等所在国外移送
男性をだまして支配下に置き、その状態のまま国外へ移送した疑いが捜査の中心となっている。
これらの容疑による摘発は、広島県内では初めてとされる。
男性が海外へ移送された経緯
男性は2026年3月11日ごろ、指定された広島駅へ向かった。
その後、新幹線などを利用して関西国際空港まで移動した。
当時、株式会社Firstの取締役だった松本佑香容疑者が広島駅から関西国際空港まで同行していたとされる。
警察は、男性が途中で逃げたり、周囲へ助けを求めたりしないよう監視していた可能性も含めて調べている。
男性は関西国際空港から台湾桃園国際空港へ渡航し、その後、指示に従ってタイへ移動した。
さらに別の東南アジアの国へ送られる予定だった可能性もあるという。
男性は日本大使館へ逃げ込んだ
タイへ移動した男性は、当初説明されていた「国内出張」と大きく異なる状況に不審を抱いた。
特殊詐欺などの犯罪に加担させられる可能性を感じ、現地の日本大使館へ逃げ込んで助けを求めたという。
男性は実際の犯罪行為に加わる前に保護され、2026年4月上旬に日本へ帰国した。
仮に大使館へ逃げ込まなければ、パスポートやスマートフォンを取り上げられ、国外の犯罪拠点から逃げられなくなっていた可能性も考えられる。
特殊詐欺や薬物の運び屋にする目的だったのか
広島県警は、男性を特殊詐欺の「かけ子」や、違法薬物の「運び屋」として働かせる目的があったとみている。
かけ子とは、被害者に電話をかけ、警察官や金融機関職員、家族などを装って現金をだまし取る役割だ。
薬物の運び屋は、違法薬物が入った荷物を指定された国や地域まで運ぶ役割を指す。
運搬する本人に中身を知らせず、「鞄を運ぶだけ」「荷物を届けるだけ」などと説明するケースもある。
海外で犯罪行為に関与すれば、現地の法律によって拘束され、重い刑罰を受ける危険もある。
トクリュウのリクルーター役だった可能性
広島県警は、前原容疑者と松本容疑者が「匿名・流動型犯罪グループ」、通称トクリュウのリクルーター役だった可能性があるとみている。
トクリュウは、暴力団のような明確な組織名や固定された構成員を持たず、事件ごとにSNSや求人サイトなどで実行役を集める犯罪グループだ。
グループ内では役割が細かく分けられている。
- 犯罪全体を指示する指示役
- 実行役を集めるリクルーター
- 特殊詐欺の電話をかけるかけ子
- 現金やカードを受け取る受け子
- 犯罪収益や違法薬物を運ぶ運び屋
- 実行役の移動を管理する監視役
実行役同士が互いの本名や所属を知らず、指示役が匿名性の高い通信アプリを利用していることも多い。
前原容疑者らにも別の指示役がいた可能性があり、警察が背後関係を調べている。
なぜ会社の面接応募者が狙われたのか
今回の事件で注目されるのが、被害男性が株式会社Firstの採用面接を受けていた点だ。
会社側は採用面接を通じて、応募者の氏名、電話番号、住所、職歴、資格、家族状況などの個人情報を把握できる立場にある。
また、応募者は過去に面接を受けた会社から仕事を紹介されれば、一定の信用があると判断する可能性がある。
警察は、通常の求人や採用面接が犯罪の実行役を探すために悪用されていなかったか、応募者情報がほかの勧誘にも利用されていなかったかを調べているとみられる。
ただし、株式会社Firstの会社組織全体や、ほかの従業員が事件に関与していたと断定できる情報は確認されていない。
前原容疑者は否認している
警察の取り調べに対し、前原里帆容疑者は「やっていない」と容疑を否認している。
一方、松本佑香容疑者は容疑を認め、次のような趣旨の供述をしていると報じられている。
「特殊詐欺や薬物の運び屋などの仕事をさせるために海外へ派遣した」
2人の供述内容には違いがある。
警察はスマートフォンの通信履歴、航空券の購入記録、宿泊先の手配、男性との通話内容、現地関係者とのやり取りなどを調べるとみられる。
逮捕は刑事手続きの途中段階であり、前原容疑者の刑事責任が確定したわけではない。今後の捜査、起訴・不起訴の判断、裁判によって事実関係が判断される。
松本佑香容疑者のプロフィール
松本佑香(まつもと ゆか)
- 生年月日:非公表
- 年齢:30歳(2026年8月の逮捕時点)
- 出身地:非公表
- 住所:広島市安佐南区
- 職業:無職(逮捕時)
- 以前の役職:株式会社First取締役
- 学歴:非公表
松本佑香容疑者は、事件当時、株式会社Firstの取締役を務めていた人物だ。
逮捕時には無職と報じられているため、事件発覚前後に会社を離れていた可能性がある。
会社内で担当していた詳しい業務や、前原容疑者との個人的な関係、トクリュウと接点を持った経緯などは公表されていない。
事件の時系列

2023年8月4日
株式会社Firstが設立される。前原里帆容疑者が代表取締役に就任する。
2024年12月
前原容疑者が、行方不明届の出ていた高齢女性を保護。家族が待つ自宅まで車で送り届けたとして、広島県警から感謝状を贈られる。
2025年ごろ
広島県内の47歳男性が株式会社Firstの採用面接を受ける。採用には至らなかった。
2026年2月上旬ごろ
男性のもとに仕事を紹介する連絡が入る。「3日ほどの国内出張」「鞄を搬入する仕事」「報酬は30万円」などと説明されたとされる。
2026年3月10日ごろまで
男性の移動や海外渡航に向けた連絡、航空券の手配などが進められたとみられる。
2026年3月11日ごろ
男性が広島駅から関西国際空港へ移動する。松本容疑者が同行していたとされる。
同日以降
男性が関西国際空港から台湾桃園国際空港へ渡航。その後、指示に従ってタイへ移動する。
2026年3月から4月ごろ
男性が犯罪に加担させられる可能性を感じ、現地の日本大使館へ助けを求める。
2026年4月上旬
男性が日本へ帰国する。
帰国後
男性からの届け出や匿名通報などをきっかけに、広島県警が捜査を進める。
2026年8月17日
広島県警が前原里帆容疑者と松本佑香容疑者を、国外移送目的誘拐などの疑いで逮捕する。
2026年8月18日ごろ
2人が送検される。前原容疑者は否認し、松本容疑者は容疑を認める趣旨の供述をしていると報じられる。
前原容疑者は過去に警察から感謝状を受けていた


前原容疑者は2024年12月、行方不明届が出ていた高齢女性を保護したとして、広島県警から感謝状を贈られていた。
前原容疑者は高齢女性に声をかけ、家族が待つ自宅まで車で送り届けたとされる。
人命保護に協力して警察から表彰された人物が、その後、同じ広島県警に国外移送目的誘拐などの疑いで逮捕されたことから、ネット上でも驚きが広がった。
ただし、過去の表彰と今回の容疑は別の問題だ。
今回の事件については、捜査や司法手続きによって判断されることになる。
株式会社Firstについて
会社概要
株式会社First(ファースト)
- 法人番号: 6240001061945
- 設立日: 2023年8月4日
- 代表取締役:前原里帆
- 本社所在地:広島県広島市東区二葉の里1丁目4番19号 ファーストビル1階
- 電話番号:082-568-6868
- FAX番号:082-568-6869
- 資本金:500万円
- 事業内容:外構工事、エクステリア工事、土木工事、解体工事
- 対応地域:広島県、山口県、福岡県
- 営業時間:午前9時から午後6時
- 定休日:日曜日
- 福岡営業所所在地:福岡県春日市白水ヶ丘2丁目80 ベルリード白水ヶ丘C棟
- 福岡営業所電話番号:092-404-6270
株式会社Firstは2023年8月に設立された比較的新しい建設関連会社だ。
公式サイトでは「お客様ファースト、社員ファースト」を掲げ、外構工事やエクステリア工事、土木工事、解体工事などを展開していた。
一部では飲食店運営会社とする情報も見られるが、会社の公式サイトに記載されている主な事業は建設関連事業となっている。
株式会社Firstの資格や許可
会社の公式サイトには、スタッフが保有する資格として次のものが掲載されている。
- 1級造園施工管理技士
- 2級造園施工管理技士
- 2級土木施工管理技士
- 1級エクステリアプランナー
- 街路樹選定士
産業廃棄物収集運搬業については、広島県と山口県の許可番号が掲載されている。
- 広島県知事許可: 03409246001号
- 山口県知事許可: 03500246001号
これらは会社として公開されていた情報であり、今回の逮捕容疑とは直接関係しない。
株式会社Firstの従業員数は?
建設業者向けの公開データベースでは、株式会社Firstの従業員数は約10人とされ、職人約8人、営業担当約2人との記載がある。
一方、政府の法人情報では、社会保険の被保険者数として6人が掲載されている。
従業員数と社会保険加入者数は必ずしも一致しないため、会社の正確な在籍人数は不明だ。
資本金についても、会社公式サイトでは500万円、過去の建設業者向け情報では450万円とする記載がある。増資や情報更新時期の違いによる可能性があり、現在の会社公式サイトでは500万円となっている。
被害者は数十人いるのか
SNS上では「数十人が海外へ送り込まれたのではないか」とする情報も見られる。
しかし、2026年8月時点で確認できる報道では、広島県警が「同様の手口で移送された人物が複数いる」とみて捜査している段階だ。
具体的な被害者数や、数十人規模の被害が確認されたとの公式発表はない。
現在判明している具体的な被害者は、逮捕容疑の中心となった広島県内の47歳男性だ。
そのほかの被害者については、年齢、性別、移送先、犯罪への関与の有無などは公表されていない。
会社自体が事件に関与していたのか
現時点で逮捕されたのは、代表取締役の前原容疑者と、事件当時取締役だった松本容疑者だ。
会社の採用面接を受けた男性が勧誘対象となっているものの、株式会社Firstのほかの従業員が事件に関与していたとの情報は確認されていない。
会社として組織的に犯罪グループへ人員を送り込んでいたと断定できる段階でもない。
今後は、会社の応募者情報がほかの勧誘に使われていなかったか、会社の電話や資金が犯罪に利用されていなかったかなども捜査の対象になる可能性がある。
今後の捜査の焦点
今後の捜査では、次の点が焦点になるとみられる。
- 前原容疑者らに指示を出した人物の特定
- 東南アジアにある犯罪拠点の特定
- 男性以外に移送された被害者の人数
- 会社の採用応募者情報が利用された経緯
- 航空券や宿泊費を負担した人物
- 移送によって支払われた報酬の有無
- 特殊詐欺や違法薬物事件との具体的な関係
- 前原容疑者と松本容疑者の役割分担
- 会社の事業と犯罪グループとの関係
- 上位の指示役や資金の流れ
前原容疑者が容疑を否認しているため、通信履歴、送金記録、航空券の購入情報、男性への説明内容など、客観的な証拠が重要になる。
まとめ


株式会社Firstの代表取締役・前原里帆容疑者と、元取締役の松本佑香容疑者は、会社の採用面接を受けた47歳男性を海外へ移送した疑いで逮捕された。
男性には「3日ほどの国内出張」「鞄を搬入する仕事」「報酬30万円」などと説明していたとされるが、実際には関西国際空港から台湾へ渡航し、その後タイへ移動していた。
警察は、2人がトクリュウのリクルーター役を担い、男性を特殊詐欺のかけ子や違法薬物の運び屋として利用しようとした可能性があるとみている。
前原容疑者は容疑を否認し、松本容疑者は「特殊詐欺などの仕事をさせるため海外へ派遣した」との趣旨の供述をしているという。
前原容疑者は2024年、行方不明になっていた高齢女性を保護したとして、広島県警から感謝状を贈られていた経歴もある。
現時点で数十人規模の被害が確認された事実はなく、警察が複数の被害者や上位の指示役について捜査している段階だ。
逮捕された2人の刑事責任は確定しておらず、事件の全容は今後の捜査や司法手続きによって判断されることになる。

