2026年8月20日午前、栃木県鹿沼市にある東武日光線・新鹿沼駅の構内で、除草薬散布工事に関わっていた男性4人が特急列車「スペーシアX2号」と接触し死亡した。
事故当時、現場には除草作業チーム9人と、作業状況を確認するために訪れていた元請け会社の監督者1人の計10人がいた。死亡したのは線路内で作業していた3人と、元請け会社の監督者1人だったとされる。
その後の東武鉄道の説明で、線路上に作業員が残っていたにもかかわらず、現場付近の列車見張り員が運転士に「安全」を示す旗の合図を出していたことが判明した。
約300メートル離れた場所にいた中継見張り員と、現場付近の列車見張り員が意思疎通できる状態ではなかったことも明らかになっている。
なぜ退避が完了していない状態で安全を示す合図が出されたのか。
警察が業務上過失致死の疑いを視野に捜査し、運輸安全委員会も事故原因の調査を進めている。
新鹿沼駅で発生した事故の概要

- 発生日時: 2026年8月20日午前10時46分頃
- 発生場所: 東武日光線・新鹿沼駅構内
- 所在地: 栃木県鹿沼市鳥居跡町1475
- 接触した列車: 特急スペーシアX2号
- 運行区間: 東武日光発・浅草行き
- 列車編成: 6両編成
- 事故時の速度: 時速約50キロとみられる
- 乗客数: 約50人
- 作業内容: 除草薬散布工事
- 現場の人数: 作業チーム9人と元請け会社の監督者1人の計10人
- 死亡者: 男性4人
- 乗客・乗務員: けが人なし
事故が発生したのは、新鹿沼駅の1番ホームに面した上り線の軌道敷内だった。
スペーシアX2号は新鹿沼駅に停車するため減速しながらホームへ進入していたが、線路内にいた4人と接触した。
死亡した男性4人の身元
栃木県警は事故後、死亡した4人の身元を公表した。
4人は東武鉄道の協力会社や元請け会社の関係者で、除草薬散布工事や現場確認に関わっていたとされる。
石川一芳さんのプロフィール
石川一芳(いしかわ かずよし)
- 年齢: 67歳
- 住所: 栃木県宇都宮市
- 職業: 公表上は職業不詳
- 事故時の状況: 除草薬散布工事に関係していたとみられる
渡辺利彦さんのプロフィール
渡辺利彦(わたなべ としひこ)
- 年齢: 65歳
- 住所: 栃木県宇都宮市
- 職業: 公表上は職業不詳
- 事故時の状況: 除草薬散布工事に関係していたとみられる
大毛茂信さんのプロフィール
大毛茂信(おおけ しげのぶ)
- 年齢: 53歳
- 住所: 栃木県日光市
- 職業: 公表上は職業不詳
- 事故時の状況: 除草薬散布工事に関係していたとみられる
佐藤和也さんのプロフィール
佐藤和也(さとう かずや)
- 年齢: 54歳
- 住所: 栃木県日光市
- 職業: 会社員
- 事故時の状況: 除草薬散布工事または現場確認に関係していたとみられる
事故当時は10人体制だった
事故発生直後は「少なくとも7人が除草作業をしていた」と報じられていた。
その後の東武鉄道の会見で、事故当時の現場には計10人がいたことが明らかになった。
内訳は次の通りとされる。
- 除草作業チーム:9人
- 現場確認に訪れた元請け会社の監督者:1人
- 合計:10人
作業チーム9人の中には、実際に除草薬を散布する作業員だけでなく、作業指揮者や列車の接近を監視する見張り員も含まれていた。
死亡したのは、線路内にいた作業員3人と元請け会社の監督者1人の計4人だった。
事故発生から8月21日までの時系列
2026年8月20日午前9時頃
作業開始前の点呼や安全確認が行われ、除草薬散布工事が始まったとされる。
午前10時46分頃
東武日光線・新鹿沼駅の上り線で、スペーシアX2号が線路内にいた男性4人と接触する。
事故発生直後
列車が新鹿沼駅構内で緊急停止。駅員から警察と消防へ通報が入る。
午前11時50分頃まで
男性4人が救出され、病院へ搬送される。3人は列車の下、1人はホーム上で発見された。
午後1時35分頃まで
搬送された男性4人全員の死亡が確認される。
午後3時22分
運転を見合わせていた東武日光線・新栃木駅から下今市駅までの上下線が運転を再開する。
午後5時頃
東武鉄道が公式文書を公表。請負工事会社による除草薬散布工事中の事故だったと発表する。
午後5時頃から
運輸安全委員会の調査官が現場に入り、線路や車両などの調査を開始する。
午後6時頃
東武鉄道が記者会見を開く。現場が10人体制だったことや、見張り員の配置、安全確認の流れなどを説明する。
8月20日夜
栃木県警が死亡した4人の身元を公表する。
8月20日
国土交通省関東運輸局が東武鉄道へ警告文書を出し、事故原因の究明と再発防止策の報告を求める。
8月21日午前
見張り員同士が意思疎通できておらず、作業員が線路内に残った状態で安全を示す旗の合図が出されていたことが報じられる。
8月21日
運輸安全委員会の調査官が東武鉄道の車両基地などで車両の状態を詳しく調べる。
国土交通省が全国の鉄道・軌道事業者に対し、線路内作業における監視体制や連絡体制、安全管理体制を再点検するよう通知する。
3人の見張り員が配置されていた
東武鉄道の説明によると、事故当時は列車の接近を監視するため、3人の見張り員が配置される体制だった。
上り線を走行する列車への安全確認では、主に次の2人が連携することになっていた。
- 作業現場から約300~315メートル離れた踏切付近にいる中継見張り員
- 作業現場から約80メートル離れた場所にいる列車見張り員
中継見張り員が接近する列車を確認し、現場付近の列車見張り員へ合図を送る。
列車見張り員は作業員へ待避を指示し、全員が安全な場所へ移動したことを確認した後、運転士に列車の進入が可能であることを旗で伝える仕組みだった。
本来の安全確認の流れ
線路内で作業を行う場合、本来は次のような手順で列車の接近に対応する。
- 中継見張り員が接近する列車を確認する
- 中継見張り員が列車見張り員へ合図を送る
- 列車見張り員が作業員へ待避を指示する
- 作業員が線路外の指定場所へ移動する
- 作業指揮者や見張り員が全員の待避完了を確認する
- 列車見張り員が運転士へ安全を示す旗を出す
- 運転士が旗を確認して警笛を鳴らす
- 列車が作業現場付近を通過する
今回の事故では、この安全確認の流れの途中で連絡や確認に問題が生じた可能性がある。
見張り員同士が意思疎通できていなかった
東武鉄道の会見で、中継見張り員が「列車見張り員と意思疎通できる状態ではなかった」と話していることが明らかになった。
中継見張り員は、作業現場から約300メートル離れた踏切付近に到着していた。
しかし、何らかの理由で現場付近の列車見張り員と連携が取れていなかったとされる。
現時点では、次の点が分かっていない。
- 中継見張り員が列車の接近を確認していたか
- 列車見張り員へどのような連絡を試みたか
- 連絡に使う機器や旗に問題がなかったか
- 意思疎通できない状態で作業を継続した理由
- 作業指揮者が連携状況を把握していたか
- 作業を一時中断する判断がなぜ行われなかったか
見張り員を複数配置していたにもかかわらず、相互の連携が取れていなかった点が事故原因を解明するうえで重要な焦点となる。
作業員が線路内にいる状態で「安全」の旗を出した
現場から約80メートル離れた場所にいた列車見張り員は、スペーシアX2号の運転士に対し、列車の進入が可能であることを示す旗の合図を出していた。
ところが、その時点で作業員らはまだ線路内に残っていたとみられている。
運転士は安全を示す旗を確認したため、警笛を鳴らして駅へ進入した。
なぜ待避完了を確認しないまま安全を示す合図が出されたのかは分かっていない。
- 列車見張り員が作業員の位置を確認できていなかった
- 待避が完了したと誤認した
- 中継見張り員から正確な情報が伝わらなかった
- 作業指揮者との連絡に問題があった
- 合図の手順や認識に食い違いがあった
こうした可能性が考えられるが、事故原因はまだ確定していない。
列車は時速約50キロで駅へ進入していた


事故当時、スペーシアX2号は時速約50キロで新鹿沼駅のホームへ進入していたとみられている。
列車は新鹿沼駅に停車する予定だったため、すでに減速していた。
運転士は列車見張り員による安全の旗を確認し、警笛を鳴らして進入したと説明している。
その後、線路内にいた作業員を確認して非常ブレーキを操作した可能性があるが、正確な操作時刻や接触時の速度は調査中だ。
鉄道車両は重量が大きく、危険を認識して非常ブレーキをかけても、停止までに一定の距離が必要となる。
運転士は安全を示す旗を確認していたことから、現時点で運転士に過失があったと断定できる情報はない。
警察が業務上過失致死を視野に捜査
栃木県警は業務上過失致死の疑いも視野に、事故当時の状況を調べている。
主な捜査対象は次の通りとなる。
- 見張り員の配置が作業計画通りだったか
- 中継見張り員と列車見張り員の連絡状況
- 作業員への待避指示が出されたか
- 誰が待避完了を判断したのか
- 安全を示す旗を出した経緯
- 作業指揮者の安全確認
- 運転士の警笛やブレーキ操作
- 列車の速度や運転状況
- 作業計画書や安全マニュアルの内容
- 東武鉄道と請負会社の指揮命令系統
刑事責任の有無は、警察による捜査や今後の司法手続きによって判断される。
国土交通省が東武鉄道へ警告文書
国土交通省関東運輸局は東武鉄道に対し、事故原因の究明と安全確保を求める警告文書を出した。
東武鉄道に対し、背後要因を含めて原因を調査し、再発防止策を速やかに報告するよう求めている。
さらに国土交通省は8月21日、全国の鉄道・軌道事業者に対して、線路内作業における次の体制を再点検するよう通知した。
- 列車の監視体制
- 見張り員同士の連絡体制
- 作業員への待避指示
- 待避完了の確認方法
- 安全管理体制
- 作業責任者の役割
今回の事故は東武鉄道だけでなく、全国の鉄道事業者に安全管理の再確認を求める事態へ発展した。
現段階で責任の所在は確定していない
今回の事故では、線路内に作業員が残っていたにもかかわらず、安全を示す旗の合図が出されたことが明らかになっている。
一方、なぜ誤った合図が出されたのか、誰が待避完了を確認する責任を負っていたのかは調査中だ。
- 列車見張り員個人の責任は確定していない
- 中継見張り員の責任も確定していない
- 運転士に過失があったとは断定できない
- 死亡した作業員側に原因があったとも断定できない
- 請負会社や元請け会社の安全管理責任は調査中
- 東武鉄道の管理や作業計画に問題があったかも調査中
刑事責任、行政上の責任、民事上の責任は、それぞれ別の手続きで判断されることになる。
今後の焦点
今後は、次の点が明らかになるかが注目される。
- 見張り員同士が意思疎通できなかった理由
- 安全を示す旗を出した判断の根拠
- 作業員へ待避指示が出されていたか
- 作業員4人が列車の接近に気付いていたか
- 指定されていた待避場所
- 作業指揮者の安全確認
- 元請け会社の監督者が線路内にいた理由
- 散布機材や連絡機器の状態
- 事故時の正確な列車速度
- 運転士が非常ブレーキを操作した時点
- 作業計画書や安全マニュアルの内容
- 東武鉄道と各協力会社の責任範囲
- 運輸安全委員会の調査結果
- 東武鉄道が示す再発防止策
まとめ

2026年8月20日午前10時46分頃、栃木県鹿沼市の東武日光線・新鹿沼駅構内で、除草薬散布工事に関係していた男性4人が特急スペーシアX2号と接触し死亡した。
死亡したのは、石川一芳さん(67)、渡辺利彦さん(65)、大毛茂信さん(53)、佐藤和也さん(54)の4人だ。
事故当時、現場には作業チーム9人と元請け会社の監督者1人の計10人がいた。死亡した4人は、線路内で作業していた3人と現場確認に訪れていた監督者1人だったとされる。
その後の東武鉄道の説明で、中継見張り員と列車見張り員が意思疎通できていなかったことや、作業員が線路内に残った状態で運転士へ安全を示す旗が出されていたことが明らかになった。
運転士は旗を確認して警笛を鳴らし、時速約50キロで駅へ進入していたとみられる。
警察は業務上過失致死の疑いを視野に捜査し、運輸安全委員会も事故原因の調査を開始した。
国土交通省は東武鉄道へ警告文書を出したほか、全国の鉄道事業者に線路内作業の監視・連絡体制を再点検するよう通知している。
なぜ退避が完了していない状態で安全の合図が出されたのか。
見張り員同士の連携、作業指揮者の確認、東武鉄道と請負会社の安全管理体制が今後の大きな焦点となる。

