北海道京極町の農業法人で働いていたミャンマー人労働者6人が、経営に関わる人物から暴力や暴言、セクハラを受けたと訴えている。
被害を訴えているのは、特定技能1号の在留資格で来日した10代から30代の男女6人。
男性1人は金属製の棒で殴られてけがをしたなどとして、京極町議会議員を含む関係者2人を暴行・傷害容疑で刑事告訴した。
労働者側は、暴行だけでなく「ミャンマーに帰す」「在留カードを取り上げる」といった脅しや、女性の体を触るセクハラ、未払い賃金、休日不足などもあったと主張している。
問題となっている農業法人は「株式会社MTアグリ」と報じられた。
関連する旧法人は2022年、外国人技能実習生の人権を著しく侵害したとして、技能実習計画の認定を取り消されていた。
この記事では、ミャンマー人労働者が訴えている被害内容、告訴までの時系列、MTアグリと旧法人の関係、注目されている町議や息子の情報を整理する。
京極町の農場でミャンマー人6人が被害を訴え
被害を訴えているのは、2026年5月から7月にかけて来日したミャンマー国籍の特定技能外国人6人となる。
内訳は女性4人と男性2人で、年齢は10代から30代。
北海道京極町にある農場で、ブロッコリーの収穫や選別などに従事していた。
労働組合によると、この農場では約30人のミャンマー人が働いており、保護された6人以外にも暴力や暴言を受けた労働者がいる可能性があるという。
6人は農場を離れた後、札幌地域労働組合に保護された。
現在は札幌市内の教会などで生活しながら、警察や入管による調査に協力している。
金属製の棒で殴られたと男性が刑事告訴
2026年8月24日、ミャンマー人男性が倶知安警察署を訪れ、農場の関係者2人を暴行・傷害容疑で刑事告訴した。
告訴対象として報じられているのは、京極町議会の60代の男性議員と、その次男とされる40代の男性となる。
告訴状などによると、男性は7月5日、草取りなどに使う金属製の棒で頭や背中、腕、足などを複数回殴られ、けがを負ったと訴えている。
翌7月6日には、町議から頬を平手で叩かれたとも主張。
これ以外にも首を絞められたり、蹴られたりしたことがあったと証言している。
警察は告訴状を受理し、当時の詳しい状況や関係者の証言、録音データなどを調べている。
ミャンマー人労働者が訴えている被害内容
労働者側が訴えている主な被害は次の通りとなる。
- 金属製の棒で頭、背中、腕、足などを殴られた
- 頬を平手で叩かれた
- 首を絞められたり蹴られたりした
- 「日本語が分からない」「やる気がないなら帰れ」と怒鳴られた
- 「ミャンマーに帰す」「在留カードを取り上げる」と脅された
- 十分な休日を与えられなかった
- 賃金の一部が支払われていない
- 女性の胸や尻を触るなどのセクハラがあった
- 寮の設備や衛生環境に問題があった
これらは労働者側の証言に基づく内容であり、警察や入管が事実関係を調査している段階となる。
「日本のご主人様は誰だ」と発言か
労働者側が保存していた録音には、経営側とされる人物が「日本のご主人様は誰だ」などと話す音声が残っているという。
このほか、「休憩はいらない」「休みは必要ない」「在留カードを出せ」といった趣旨の発言もあったと報じられている。
外国人労働者にとって、在留カードや在留資格に関する脅しは大きな心理的圧力となる。
実際には、雇用主が独断で在留資格を取り消したり、労働者を強制的に帰国させたりすることはできない。
しかし、日本語や制度を十分に理解していない労働者が、雇用主の言葉を信じて逃げられない状態に陥る可能性が指摘されている。
女性4人がセクハラ被害を訴え
保護された女性4人は、仕事中などに胸や尻を触られたり、体を叩かれたりするセクハラを受けたと訴えている。
女性たちは抗議することが難しく、雇用主から帰国や在留資格への影響を示唆されることを恐れていたという。
農場を離れる際には、逃げることが知られないよう荷物を草むらに隠し、深夜に農場を抜け出したとも説明している。
女性4人が先に農場を離れ、その後、男性2人も労働組合に保護された。
被害を訴えている6人の氏名や顔写真、詳しい居住地などは、プライバシー保護のため公表されていない。
被害発覚から刑事告訴までの時系列
2022年3月25日
関連する旧法人「有限会社M&Tアグリシステム」が、技能実習生の人権を著しく侵害したとして、技能実習計画の認定を取り消される。
2022年5月頃
行政処分から約47日後、同じ所在地に別法人が設立されたとされる。
2026年5月から7月
ミャンマー人の特定技能労働者が来日し、京極町の農場で働き始める。
2026年7月5日
ミャンマー人男性が、金属製の棒で頭や手足などを殴られ、けがを負ったと訴える。
2026年7月6日
同じ男性が、60代の町議から頬を平手で叩かれたと主張する。
2026年7月下旬
女性労働者4人が農場から逃れ、札幌地域労働組合に保護される。
2026年8月4日
労働組合が札幌出入国在留管理局へ保護と調査を申し入れる。
2026年8月中旬
男性労働者2人も農場を離れ、保護された労働者は合計6人となる。
2026年8月19日
札幌出入国在留管理局が農場を立ち入り調査する。
2026年8月20日
労働組合が法人側に暴力やハラスメントの停止、未払い賃金の支払いなどを申し入れる。
2026年8月21日
労働者と支援者が札幌市内で記者会見を開き、被害を公表する。
2026年8月24日
男性労働者が、60代の町議と40代の次男を暴行・傷害容疑で刑事告訴する。
2026年8月28日
問題となっている町議が京極町議会を欠席。
9月の定例会も一身上の都合で欠席する意向が伝えられる。
問題となった農業法人・MTアグリについて


会社概要
今回、ミャンマー人労働者が働いていた農業法人は「株式会社MTアグリ」と報じられている。
- 法人名: 株式会社MTアグリ
- 所在地:北海道虻田郡京極町字三崎56番地
- 電話番号:0136-42-3986
- 事業内容: 農業、農作業受託など
- 主な作物: ブロッコリーなど
- 外国人雇用: ミャンマー人を中心とした特定技能外国人
労働組合は、MTアグリが外国人労働者を支援する登録支援機関の役割も担っていたと指摘している。
雇用主と支援機関が事実上同じ場合、労働者が雇用上の問題を相談しにくくなる可能性がある。
旧法人M&Tアグリシステムとの違い
MTアグリと、過去に行政処分を受けた有限会社M&Tアグリシステムは、登記上は別の法人となる。
旧法人の概要は次の通りとなる。
- 法人名: 有限会社M&Tアグリシステム
- 所在地: 北海道虻田郡京極町字三崎56番地
- 電話番号:0136-42-3986
- 事業内容: 農業、農作業受託、外国人技能実習生の受け入れ
- 過去の代表取締役: 渡邊基樹、渡邊拓也
旧法人と現在の法人は、所在地や連絡先、農場などに共通点があると報じられている。
労働組合は、旧法人の関係者が新法人でも実質的に経営へ関与していたとして、行政処分を避けるために別法人を設立したのではないかと指摘している。
一方、法人側はこうした主張を認めておらず、登記上の役員も旧法人とは異なるとされる。
2022年にも技能実習生への人権侵害で行政処分
有限会社M&Tアグリシステムは2022年3月25日、外国人技能実習生の人権を著しく侵害する行為があったとして、技能実習計画の認定を取り消された。
認定取り消しを受けた事業者は、一定期間、新たな技能実習生を受け入れることができなくなる。
行政処分の対象資料には、旧法人の代表者として渡邊基樹氏と渡邊拓也氏の名前が記載され、渡邊昭氏個人も別に処分対象として掲載されていた。
その約47日後、同じ場所で別法人が設立され、特定技能制度を利用して外国人労働者の受け入れが再開されたと指摘されている。
旧法人への処分と現在の法人は法的には別問題だが、同じ農場をめぐって再び外国人労働者から人権侵害の訴えが出たことで、制度上の監視が十分だったのかが問われている。
告訴された京極町議・渡邊昭について


プロフィール
渡邊昭(わたなべ あきら)
- 生年月日: 非公表
- 年齢: 60代後半
- 出身地: 非公表
- 職業: 農業、京極町議会議員
- 党派: 無所属
- 議会所属: 総務常任委員会
- 当選歴: 京極町議会議員
2023年の京極町議会議員選挙では64歳と記載されていた。2026年時点では60代後半とみられるが、詳しい誕生日は公表されていない。
過去の技能実習計画認定取り消しに関する資料にも、同姓同名の人物が処分対象として記載されている。
長男・渡邊基樹のプロフィール
渡邊基樹(わたなべ もとき)
- 生年月日: 1980年10月13日
- 年齢: 45歳
- 出身地: 北海道京極町
- 職業: 農業
- 学歴: 北海道農業専門学校卒業
- 過去の役職: 有限会社M&Tアグリシステム代表取締役
- 選挙歴: 2023年京極町長選挙に立候補し落選
渡邊基樹氏は、旧法人の代表取締役として公開資料に名前が記載されている。
2023年には京極町長選挙へ無所属で立候補したが、現職候補に敗れた。
今回の刑事告訴で報じられているのは「町議と次男」であり、長男の渡邊基樹氏が告訴対象になったとは報じられていない。
次男・渡邊拓也のプロフィール
渡邊拓也(わたなべ たくや)
- 生年月日: 非公表
- 年齢: 非公表
- 出身地: 非公表
- 職業: 農業関係者とみられる
- 過去の役職: 有限会社M&Tアグリシステム代表取締役
渡邊拓也氏は、旧法人の代表取締役として過去の公開資料に名前が記載されている。
労働者からは、農場内で「専務」と呼ばれていた人物がいたとの証言も出ている。
法人側は事実関係を精査中
農業法人側は取材に対し、社内で事実関係を調査しているとの趣旨を回答している。
労働者側が訴えている暴行、暴言、セクハラ、未払い賃金などについては認めていない。
労働組合は法人側に対して、暴力やハラスメントの即時停止、未払い賃金の支払い、労働条件の改善、団体交渉への出席を求めている。
現段階では労働者側と法人側の主張が一致しておらず、警察や入管による調査結果が重要となる。
町議は議会を欠席
問題が報じられた後、関係する町議は8月28日の京極町議会を欠席した。
9月の定例会についても「一身上の都合」を理由に欠席する意向を示しているとされる。
町議会では、本人が住民や議会に説明していないことを問題視する声が出ている。
一方、町議は選挙で選ばれた立場であり、町役場や町長が独断で辞職させることはできない。
京極町は、町に相談が寄せられた場合には関係機関と連携して対応するとの方針を示している。
特定技能制度でも逃げられなかった理由
特定技能制度は、技能実習制度とは異なり、一定の条件を満たせば同じ分野内で転職できる仕組みとなっている。
しかし、実際には言葉の壁や住居、在留手続き、転職先探しなどの問題があり、外国人労働者が自力で雇用主から離れることは簡単ではない。
雇用主が住居や移動手段、在留手続き、生活支援まで管理している場合、労働者は強い立場の差を感じやすくなる。
今回の6人も、帰国や在留カードについて脅され、農場を離れることが難しかったと訴えている。
過去に処分を受けた事業者の関係者が、別法人を通じて特定技能外国人を再び受け入れられる仕組みについても、制度上の課題として注目されている。
今後の捜査と焦点
2026年8月30日時点で、警察と札幌出入国在留管理局が事実関係を調べている。
男性による刑事告訴は受理されたが、関係者が逮捕されたとの発表はない。有罪が確定した段階でもない。
今後の主な焦点は次の通りとなる。
- 金属製の棒による暴行を裏付ける証拠
- 診断書や負傷状況との整合性
- 録音データの内容と発言者
- 女性に対するセクハラの有無
- 未払い賃金や休日の実態
- 法人と登録支援機関による支援状況
- 旧法人と現在の法人との実質的な関係
- ほかのミャンマー人労働者への被害の有無
- 町議本人や法人側による説明
まとめ
北海道京極町の農業法人「MTアグリ」で働いていたミャンマー人労働者6人が、暴力や暴言、セクハラ、未払い賃金などの被害を訴えている。
男性労働者1人は、金属製の棒で殴られてけがをしたなどとして、60代の京極町議と40代の次男を暴行・傷害容疑で刑事告訴した。
関連する旧法人「有限会社M&Tアグリシステム」は2022年、外国人技能実習生の人権を著しく侵害したとして、技能実習計画の認定を取り消されていた。
行政処分から約47日後に別法人が設立され、再び外国人労働者を受け入れていたとされる点も問題視されている。
現時点では労働者側の訴えを警察や入管が調査している段階であり、逮捕や起訴、有罪が確定したわけではない。
今後は捜査結果に加え、法人側や町議本人がどのように説明するのかが焦点となる。

