大阪府警の現職警視が、自ら陣頭指揮を執るべき「児童買春・パパ活」の取り締まり対象と同じ行為に及び、逮捕・起訴された事件は、日本の警察史上でも稀に見る「裏切り」として社会に大きな衝撃を与えました。
本記事では、辻本浩嗣元被告のプロフィールから、犯行の動機、裁判で明らかになった驚きの余罪、そして最終的な判決までを詳細に解説します。
辻本浩嗣のプロフィール


まずは、事件当時の身分や経歴について整理します。
辻本浩嗣(つじもと ひろつぐ)
- 生年月日: 1971年(昭和46年)生まれ(逮捕時53歳)
- 出身地: 奈良県(※大阪府警に採用され、長年勤務)
- 最終役職: 大阪府警察本部 生活安全部 生活安全特別捜査隊 班長(階級:警視)
- 経歴の概要:辻本元被告は、いわゆる「ノンキャリア」の叩き上げとして警視まで昇進した、警察組織内でもエリートの部類に入る人物でした。
特に「生活安全部門」でのキャリアが長く、風俗営業の許可や取り締まり、児童虐待防止、そしてSNSを悪用した性犯罪の抑止など、市民の安全に直結する業務に従事してきました。
事件の発覚と逮捕の経緯
事件が明るみに出たのは2025年8月のことでした。
きっかけは、被害に遭った少女の周辺から寄せられた情報や、SNS上のパトロール、さらには別件の捜査から浮上した疑いでした。
犯行の具体的な内容
辻本元被告は、2025年6月下旬から7月中旬にかけて、大阪市内のカラオケ店の個室において、16歳未満の少女2人に対し、それぞれ現金を渡す約束をした上で、わいせつな行為に及んだとされています。
この行為は、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(買春)や、不同意わいせつ罪に該当するものでした。
特筆すべきは、彼が「SNS」を使って少女らと接触していた点です。SNSを用いた未成年者への接触は、まさに彼が班長として「取り締まる側」で日々警戒に当たっていた手法そのものでした。
驚愕の余罪:11人の女性との「パパ活」
逮捕後の取り調べや公判の中で、今回の事件が「単発の過ち」ではなかったことが次々と明らかになりました。
捜査当局の調べに対し、辻本元被告は驚くべき告白をしています。
- 「SNSを通じて知り合った女性、計11人とパパ活をしていた」
- 「そのうち数人は、18歳未満であると認識していた」
彼は日常的にパパ活サイトやSNSを巡回し、金銭を餌に若い女性や少女を物色していました。
警察のデータベースや捜査手法を熟知している立場を利用し、自分が摘発されないよう細心の注意を払いながら、「裏の顔」を楽しんでいたのです。
「なぜ?」エリート警察官が堕ちた動機
裁判の中で、辻本元被告は自身の動機について、以下のような趣旨の供述を行いました。
- 仕事による極度のストレス
責任ある立場(警視・班長)として、日々の事件捜査や部下の管理、組織内のプレッシャーに晒されており、その逃げ道を探していたと主張しました。 - 強い刺激への依存
「最初は軽い気持ちだったが、スリルと刺激に抗えなくなった」と述べています。取り締まる側の人間が禁忌を犯すという背徳感が、彼の欲望をさらに歪ませた可能性があります。 - 万能感と油断
「自分ならバレない」「捜査の裏側を知っているから大丈夫だ」という、権力を背景にした身勝手な自信(万能感)が、歯止めを失わせた要因であると指摘されています。
しかし、検察側は「職責を完全に放棄した、あまりに身勝手な動機であり、弁解の余地はない」と厳しく断じました。
大阪府警の対応と懲戒免職
この不祥事に対し、大阪府警本部長は異例の謝罪コメントを発表しました。
「警察に対する信頼を根底から覆す、極めて遺憾な事態」とし、組織を挙げての調査が行われました。
2025年10月16日、大阪府警は辻本被告に対し、最も重い処分である「懲戒免職」を決定しました。
これにより、彼は長年勤め上げた警察官としての地位だけでなく、退職金などの権利も全て失うこととなりました。
また、直属の上司や生活安全部の幹部らに対しても、監督責任を問う形で減給や訓戒などの処分が下されました。
警察内部では「身内によるSNS利用の制限」や「倫理教育の再徹底」が急務となりました。
裁判の結果と判決の内容
2025年12月17日、大阪地方裁判所で判決公判が開かれました。
判決:懲役2年・執行猶予4年
裁判長は判決理由の中で、以下のように厳しく批判しました。
一方で、懲戒免職処分を受けて社会的制裁を既に受けていること、事実を認めて反省の弁を述べていることなどを考慮し、執行猶予付きの判決となりました。
まとめ:事件が残した教訓と社会への影響
辻本浩嗣元被告の事件は、単なる一警察官の不祥事という枠を超え、現代社会における「パパ活」の闇と、公権力を持つ者の倫理観の危うさを浮き彫りにしました。
- 取り締まりの難しさ: 捜査のプロが加害者側に回った場合、その犯行を察知するのは極めて困難です。
- SNSの危険性: 10代の少女たちが、金銭をきっかけに簡単に見知らぬ大人(しかも本来守ってくれるはずの警察官)と繋がってしまうリスクが再確認されました。
- 組織の風通し: 班長という高い地位にある人物の異常行動を、周囲の部下や同僚がなぜ察知できなかったのか、組織の硬直性も問題視されました。
辻本元被告は現在、一市民として社会復帰を目指しているとされていますが、彼が壊した「警察への信頼」を回復するには、途方もない時間が必要となるでしょう。

