農林水産省の若手女性職員が上司のセクハラ・パワハラを受けた後に自殺した問題で、遺族が国に約1億3900万円の損害賠償を求め提訴した。
すでに国の審査で「公務災害」と認定されているにもかかわらず、国側は請求棄却を求めて争う姿勢を示している。
この矛盾はなぜ生じるのか。
事件の経緯と法的争点を整理する。
事件概要


農林水産省九州農政局に勤務していた20代女性職員が、上司からのセクシャルハラスメントやパワーハラスメントにより精神的に追い詰められ、自殺したとして、遺族が国を提訴した。
2026年2月24日、福岡地裁で第1回口頭弁論が開かれ、遺族側は国の安全配慮義務違反を主張。
一方、国側は請求棄却を求めて全面的に争う姿勢を示した。
時系列整理
女性は2018年4月に新卒で九州農政局へ入庁。
配属直後から男性上司による私的なメールや執拗な誘い、卑猥な発言、身体接触などのセクハラを受けたとされる。
さらに上司を避けるようになると、業務上の立場を利用した叱責や威圧的言動などパワハラが続き、精神的に追い込まれたという。
女性は2018年9月に精神疾患を発症して休職。その後復職や異動を試みたものの症状は改善せず、退職後もPTSD症状が続いた。
再就職を目指したが男性との接触で体調が悪化するなど社会復帰が困難となり、2023年8月に自ら命を絶ったとされる。
ミヤカツ上記が事実なら、とても酷い上司ですね。
許せません!!
加害上司と組織の対応
内部調査の結果、農政局はセクハラ・パワハラの事実を認定し、2022年9月に上司を停職9か月の懲戒処分とした。
ただし、組織としての防止体制や対応の妥当性については、遺族側が不十分だったと主張している。



SNS上でも刑が軽すぎるとの指摘が多数出ています。
公務災害はすでに認定されている
本件では2025年4月、女性の精神疾患と自殺が業務に起因すると認められ、「公務災害」として認定されている。
つまり国自身が
「職務との因果関係はある」
と判断した事案である。
ここが今回の裁判で最大の違和感となっている。
なぜそれでも請求棄却を主張するのか
結論から言うと、公務災害認定と損害賠償責任は別問題だからだ。
公務災害認定とは
・業務が原因で病気や死亡が発生したと認める制度
・遺族に補償給付が支払われる
・因果関係の有無が判断対象
損害賠償訴訟とは
・組織に法的責任があるかを判断する裁判
・安全配慮義務違反の有無が争点
・補償額が大きく異なる
つまり「仕事が原因」と認めることと「国が法的に賠償すべきか」は別判断になる。
国側は通常、
・防止体制は整っていた
・個別上司の問題
・組織の責任までは認められない
といった主張をするケースが多い。
今回も同様の構図とみられる。
退職後の自殺が争点になる可能性
今回の事件は退職後の自死である点も重要だ。
遺族側は
・ハラスメントが原因のPTSDが継続
・社会復帰を阻んだ
と主張している。
一方国側は
・退職後の環境要因
・因果関係の断絶
などを争点にする可能性がある。
この「時間的距離」が裁判の大きな論点になる。
社会的な意味
この事件は単なる職場トラブルではない。
・国家機関の安全配慮義務
・若手公務員のメンタル問題
・ハラスメント防止制度の実効性
といった、公務員組織全体の構造が問われる問題となっている。
近年は民間企業でも同様の裁判が増えており、行政機関の責任基準がどう判断されるかは大きな前例になる可能性がある。
まとめ
農林水産省の女性職員自殺問題は、すでに公務災害として認定されているにもかかわらず、国が賠償責任を否定して争うという構図にある。
これは制度上、公務災害認定と損害賠償責任が別物だからだが、職場ハラスメントと国家の責任範囲をどう判断するかという重大な論点を含んでいる。
今回の裁判は単なる個別事案にとどまらず、公務員の安全配慮義務の基準を示す重要なケースとして注目されることになりそうだ。









