インドやバングラデシュなどアジアで毎年のように確認される ニパウイルス感染症。
2026年1月には西ベンガル州(インド)での感染が確認され、複数の国で空港検疫や健康監視が強化されるなど、再び注目を集めています。
致死率が40〜75%と高く、ワクチンや治療法がないとされるこのウイルスは、なぜ危険視されるのか?その特徴と感染経路、症状、予防の基本をわかりやすく解説します。
ニパウイルスとは?何が問題なのか

ニパウイルス(Nipah virus) は、鳥ではなく 果物コウモリ(フルーツバット)を自然宿主とするヘニパウイルス属のウイルスです。
人や動物に感染し、時には重篤な疾患を引き起こす 動物由来感染症(人獣共通感染症) とされています。
1999年に マレーシアとシンガポールで初めて確認され、その後バングラデシュやインドなどで断続的にアウトブレイク(感染拡大)が起きています。
インド・西ベンガル州での最新事例(2026年)
2026年1月、インド・西ベンガル州で 尼パウイルス感染症の患者が複数確認され、保健当局が対応に追われています。
一部では空港の健康検査が再導入されるなど、域内外で警戒が強まっています。
WHO(世界保健機関)によると、同州など過去に確認例のある地域では、症状が現れやすく、高い致死率とヒトからヒトへの感染可能性が問題となっています。
どのように感染する?主な感染経路

ニパウイルスは人間に次のような経路で感染します
- 感染コウモリやブタなどの動物と接触
コウモリの尿や唾液で汚染された果物・飲料を介して感染することがある。 - 汚染された食品や飲料の摂取
生のナツメヤシ樹液(デーツの樹液)などを介して感染する過去の事例あり。 - 人から人への直接的接触
患者の体液や飛沫などを介して感染することが報告されています。
つまり、単なる動物由来だけではなく、人同士の濃厚接触による感染も十分に起こり得る、非常に注意が必要なウイルスです。
初期症状から重症化までの流れ

感染後の潜伏期間は通常 4〜14日程度 ですが、まれに45日までと報告されています。
初期の症状は風邪に似ています
- 発熱
- 頭痛
- 咳
- 喉の痛み
- 呼吸困難
- 嘔吐
といった症状が見られ、その後重篤化すると…
- 意識障害
- せん妄や混乱
- 重度の脳炎(急性脳炎)
- けいれん、昏睡
- 呼吸不全
といった、致命的な合併症を引き起こすことがあります。
致死率の高さと治療法の現状
ニパウイルス感染症は、アウトブレイクごとに患者の40〜75%もの致死率が報告されています。
これは同じ人獣共通感染症の中でも極めて高い数字であり、一部の患者は症状が進むと数日〜数週間で脳炎や呼吸不全に至るケースもあります。
重要な点として、現時点で世界的に承認されたワクチンや特効薬は存在しておらず、治療は対症療法(症状に対する支持療法)が中心です。
なぜ世界的に警戒されるのか
WHOはニパウイルスを 「優先的に対策が求められる病原体(Priority Pathogen)」 に指定しており、将来的な流行拡大のリスクが懸念されています。
理由は主に次の通りです
- 高い致死率
- ワクチン・治療法がない現状
- 人から人への感染可能性
- 感染初期は症状が風邪と似ており判断が難しい
- 感染から重症化までが比較的早い場合があるため
こうした危険性は、過去のアウトブレイクで繰り返し確認されています。
予防の基本—個人でもできる対策
ワクチンや治療薬がまだない現状では、次のような基本的な予防対策が重要です
✔ コウモリや病気の動物との接触を避ける
✔ 汚染の可能性がある食品(果物・ナツメヤシの樹液など)は十分に洗浄・加熱する
✔ 患者や体液との接触は避け、医療従事者は保護具を使用する
✔ 手洗いなど衛生管理を徹底する
これらは初期段階の感染リスクを下げる効果が期待されます。
まとめ:ニパウイルスの“見えない恐怖”

ニパウイルス感染症は、決して世界の一部だけの話ではありません。
高い致死率、特効薬・ワクチンがない現状、そして人間同士での感染も起こり得るという点が、このウイルスを深刻な公衆衛生上の脅威にしています。
現時点では日本国内での感染報告はありませんが、インドやバングラデシュなどでの過去の大規模アウトブレイク、そして最新の感染例を受けて、旅行者だけではなく広く一般の人々が基本的な予防策を理解し実践することが求められています。

