「食べること」は、生きる喜びそのものだ。しかし加齢や病気によって、その当たり前が失われる現実がある。
嚥下(えんげ)医療という専門分野で、日本の最前線を走り続けてきたのが 上羽瑠美医師だ。
2026年1月18日放送の「情熱大陸」では、「人生最後まで食べる楽しみを」という信念を胸に、患者と向き合い続ける喉の外科医の姿が描かれた。
明朗活発で“制御不能”な子ども時代

1977年、愛媛県松山市生まれ。
上羽瑠美さんは、自らを「制御不能なほど明朗活発だった」と振り返るほど、エネルギーに満ちた子どもだったという。
一度興味を持つと、とことん突き詰める性格は幼少期から変わらない。
小さい頃はドラゴンクエストに没頭し、学生時代にはテニスに打ち込む日々。
何かに熱中すると周囲が見えなくなるほどの集中力と探究心は、のちに医師としての礎になっていく。
医学部進学、そして「嚥下医療」との出会い
「手先の器用さを活かせるかもしれない」
そんな理由から奈良県立医科大学へ進学するが、在学中もテニス漬けの生活を送っていたという。
転機が訪れたのは、研修医1年目。
嚥下障害を抱える患者との出会いだった。
食事中にむせる、飲み込みづらい、食事に時間がかかる――。
それまで見過ごされがちだった「喉の衰え」が、患者の生活の質を大きく左右する現実を目の当たりにし、上羽医師は嚥下医療の道へ進む決意を固める。
超高齢社会で高まる嚥下医療の重要性

嚥下障害は、加齢による筋力低下だけでなく、脳梗塞、脳腫瘍、神経疾患など、さまざまな原因で起こる。
超高齢社会を迎えた日本では、今後ますます需要が高まる分野だ。
各地の大学病院に専門外来は存在していたが、国立大学として正式な診療部門を持つ施設は長らくなかった。
東大病院・摂食嚥下センター設立という挑戦
2021年、東京大学医学部准教授に就任。
同年、国立大学として初めて正式な診療部門となる「東大病院・摂食嚥下センター」を設立し、センター長に就任する。
これは、日本の嚥下医療における大きな転換点だった。
診療だけでなく、臨床研究、論文執筆、講演活動を通じて、嚥下医療の標準化と普及に尽力している。
「喉オタク」として患者に向き合う医師
自身を「喉オタク」と呼ぶほど、喉の構造と機能への探究心は深い。
食べることが大好きだからこそ、「食べられなくなった患者の役に立ちたい」という想いは誰よりも強い。
治療が困難とされる患者の中には、上羽医師のもとに最後の希望を託す人も少なくない。
「もう一度、口から食べたい」患者の願い

「情熱大陸」で描かれたのは、脳腫瘍の手術後に重度の嚥下障害を抱えた71歳女性のケース。
「もう一度、口から物を食べたい」という切実な願いに対し、上羽医師は複数の手術を組み合わせた嚥下機能改善手術に挑む。
しかし、想定以上に重い障害が判明し、治療の選択は簡単ではない。
それでも患者の人生と尊厳に向き合い続ける姿は、医療の本質を問いかけるものだった。
人生最後まで「食べる喜び」を支えるために
上羽瑠美医師が向き合っているのは、単なる症状ではない。
「生きる楽しみ」「人生の尊厳」そのものだ。
医学的な限界と向き合いながらも、患者の願いを諦めない。
その姿勢こそが、日本の嚥下医療を牽引する原動力となっている。
まとめ

上羽瑠美さんは、
・卓越した専門性
・尽きることのない探究心
・患者一人ひとりの人生に寄り添う覚悟
これらを併せ持つ、日本を代表する嚥下外科医だ。
「人生最後まで食べる楽しみを」
その言葉は、医療の枠を超え、私たちの生き方そのものに問いを投げかけている。
2026年1月18日放送の「情熱大陸」は、嚥下医療の最前線と、ひとりの医師の信念を深く知る貴重な機会となった。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

